- 2021年1月6日更新
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- 医師監修
【糖尿病専門医監修】「糖尿病の初期症状かも?」は既に症状進行の可能性

糖尿病は、大人の男性だけではなく、女性、子供、小児まで注意が必要です。症状のチェックポイントは、のどの渇き、多尿・頻尿、手足や足の指のしびれ、皮膚の違和感、足のむくみ、痩せる、眠気、目の視力低下など…。女性は妊娠糖尿病の存在も知っておきましょう。

糖尿病は、その名の通り尿中に糖が出てしまう病気ですが、実はその原因は血液中の糖が過剰になることにあります。
血液は常に腎臓で濾過されており、不要なものが尿中に排泄されますが、糖も過剰になると尿中に排泄されます。
まずは、糖尿病によって、身体にどのような症状が出るのかを今日このタイミングで知っておきましょう。
糖尿病・糖尿病予備軍の主な症状・チェック方法
糖尿病・糖尿病予備軍の主な症状は以下の通りです。男性、女性、妊婦さん、子供を持つママも含め、まず糖尿病のセルフチェック方法として、下記症状がないか、考えてみましょう。
- のどの渇き(多飲)
- 多尿(頻尿)
- 倦怠感
- やせ
- 手足のしびれ(神経障害) 特に足の指に注意
- ED(勃起不全)
- むくみ
- 視力低下
のどの渇きと多尿と倦怠感(水分バランスの乱れ)
糖尿病の症状は、全身のいろいろな部位に出る可能性があります。よくある症状としてまず挙げられるのは、「のどの渇き」です。糖尿病になると、血液中の糖が多くなりますので、とても濃い状態になります。
また、身体の中で余った糖を腎臓から排泄する際にはその分の水が必要ですので、水分が失われてしまいます。そのため、不足している水分を補うべく、自然と水を飲みたくなるようになる上、尿量が増えることで頻尿になるのです。
同時に、身体の中で水分のバランスが乱れると、倦怠感が出てきます。倦怠感とは、「なんとなくだるい」「最近疲れやすい」といった症状のことです。
「今年こそはダイエットしよう!」と思っても、すでに糖尿病を発症していると、そもそも日常生活を送るだけで慢性的な疲れが出ていますので、到底ランニングなんてできません。
このように、血液中の糖が多いと水分のバランスが乱れため、口渇、頻尿、倦怠感に悩まされることになります。
「何もしていないのに痩せた」というのも危険なサイン
最近痩せたから糖尿病の心配はないと考えるのは誤りです。それは、糖尿病でも痩せることがあるからです。
糖尿病では血液中の糖が多くなります。そして糖は、インスリンというホルモンが出ると組織中にとりこまれて利用されます。
糖尿病が進むと、頑張ってインスリンを分泌していた膵臓が疲弊し、インスリンを分泌する能力そのものが低下してしまいます。
インスリンが不足すると、身体は十分に糖を利用できなってしまいますので、他のエネルギー源として、筋肉や脂肪を分解して使うようになります。
そのため、糖尿病が進行すると痩せてしまうのです。
「特に何も運動をしていないのに痩せてきた」と思って喜んでいたら、実は糖尿病で、必要な筋肉まで分解されていつのまにか取り返しのつかない体になっているかもしれません。
気づかないうちに手や足の皮膚がやけどするのは、神経障害を疑うサイン
「コタツに入っていたら、いつのまにか足の皮膚が赤く腫れてやけどしていた」というようなことがあれば、それは糖尿病性末梢神経障害かもしれません。
糖尿病になると、神経がダメージを受けます。これは、過剰な糖やその代謝産物が血管や神経を傷つけるためです。特に、物理的に距離の長い下肢の末梢神経に最初に影響が出てきます。
神経に障害が起きると、熱さや冷たさがわかりづらくなります。そのため、健康な人であれば熱いところを触ったら瞬時に手を引くところでも、糖尿病の人はそれに気づかず、いつのまにか重度のやけどをおってしまうことがあるのです。
痛みや不快な感覚というのは、危険な刺激から逃げるために備わっていますので、それが欠落してしまうことはとても怖いことです。
糖尿病の方で脚を切らざるを得なくなる方が大勢いるのは、そうした神経障害によるところが大きいのです。
彼氏や夫がED(勃起不全)かも?と思ったら糖尿病の始まりかも
糖尿病が進行するとEDになります。糖尿病は、血管と神経がダメージを受ける病気であるため、放置すればかなり高い確率でEDを発症します。
ED自体、最近の研究では心筋梗塞を始めとした重大な心臓病の前触れであることが分かってきました。陰茎が勃起するという現象は血流の良し悪しをダイレクトに受けますので、血管へのダメージが最初にあらわれてくる部位なのです。
若い頃は元気でも30代、40代でEDになる方は意外といますが、特に糖尿病があるとそのリスクが高まります。
全身のむくみは腎不全の兆候の可能性あり
糖尿病が進行し、血管にダメージが及ぶと、細かい血管の集合体である腎臓にも影響が出てきます。
腎不全が進むと、身体の中の水や不要物が排泄できなくなり、溢水(いっすい)といって体中が水浸しで息苦しくなってしまったり、尿毒症になり激しい倦怠感に襲われたりします。
腎臓は一度悪くなると機能が戻らないことも多く、糖尿病性腎症がひどくなると血液透析が必要になります。
糖尿病の方がむくみやすい原因のひとつとして、腎不全があります。
最近やけにむくみやすいと思っていたら、実は糖尿病がかなり進行していて、腎臓まで悪くなってしまっているのかもしれません。
通常、そこまで進行する前に他の症状が先行して診断されますが、すでに出ている他の症状に気付いていないだけの患者さんも意外と多く、医師に指摘されてはじめて「そういえば最近やけに口が渇くと思っていました」とおっしゃる患者さんも多いのです。
失明の原因トップ2は、緑内障と糖尿病
糖尿病では、目の網膜の血管もダメージを受けます。糖尿病性網膜症といい、日本の失明原因の中で、緑内障と並んで約20%を占めています。
糖尿病によって血管がダメージを受けると、容易に出血するようになります。目のかすみなどが出て、徐々に進行し、最終的には失明してしまいます。
また、糖尿病網膜症のある方が、糖尿病の治療を始めたときに、急激に血糖値を下げ過ぎると、糖尿病網膜症が急に悪化してしまうことがあるので注意が必要です。
糖尿病と診断された際に、目のかすみや視力低下といった症状がある場合には、早めに眼科を受診する必要があります。
20代、30代の女性でも糖尿病になる?妊娠糖尿病とは?
糖尿病患者というと、自堕落な生活をしている中高年以上の男性というイメージをお持ちの方もいらっしゃいますが、実は若い女性でも糖尿病にかかることがあります。
妊娠糖尿病といいますが、これは妊娠における体の代謝変化で、インスリン抵抗性が大きくなり(インスリンが効きづらくなり)、インスリンの必要量が増え、糖尿病になるというものです。
妊娠による影響で糖尿病になるもので、産後は改善することがほとんどですが、妊娠糖尿病を起こす方は将来的な糖尿病のリスクが高いことが分かっています。
一度改善したと思っても、将来的に糖尿病の症状が出てこないか注意する必要があります。
妊娠糖尿病になると、妊娠経過に影響が出ることがあります。妊娠高血圧症候群の合併、流産・早産のリスク上昇、羊水過多、帝王切開を要する率が高くなること、感染症などが主なリスクです。
また、大人の体にとっても高血糖はダメージになるのですから、当然お腹の中の赤ちゃんにも影響が出ることがあります。巨大児、子宮内胎児死亡、電解質異常が起こることや、無事産まれても小児期の肥満などの率が上がることが分かっています。
小児でも発症する糖尿病 1型糖尿病
糖尿病には1型と2型があります。糖尿病の多くは2型糖尿病といって、生活習慣病の一種です。
最近は小児の生活習慣の乱れによるメタボリックシンドロームも問題視されていますが、そうした生活習慣とは関係なく糖尿病を発症してしまう場合があり、それが1型糖尿病です。
1型糖尿病の主な原因としては、自己免疫による糖尿病です。自己免疫により、すい臓に悪さをする抗体が出来てしまうことが原因です。抗体というのは免疫細胞から作られる、外敵を駆除するためのタンパク質です。
そもそも身体には、異物に反応する免疫が備わっています。風邪やインフルエンザなどのウイルスが体内に侵入してきた際に、自分の体の中にもともといるものではないと認識し、排除する仕組みが免疫です。
この免疫系は、通常自分の体そのものを攻撃することはありませんが、何らかの原因によって自身の膵臓に悪さをする抗体ができてしまうと、免疫細胞が攻撃してしまいます。
すると、膵臓でインスリンを作ることができなくなり、血糖値が急激に上昇して、糖尿病になってしまうのです。こうした機序による糖尿病は、小児だけでなく成人においても発症します。インスリンの不足が主な病態ですので、生涯、インスリン注射を要するようになります。
小児が持続的な強い口の渇きや倦怠感を訴える場合、糖尿病の可能性も考えて一度内科を受診してみることも検討しましょう。
糖尿病の初期症状は人それぞれ 定期検診が大切
糖尿病の初期症状は人それぞれ異なります。人間誰しも、痛みの出る病気であれば「何か重大な病気かもしれない」と考えて積極的に受診を検討しますが、糖尿病はむしろ「痛みや熱さを感じにくくなる」「なんとなくだるい」といった、いつのまにか出てくる症状が多いため、医師から指摘されて初めて糖尿病の症状だと知ることがしばしばあります。
また、特に生活習慣病に起因する糖尿病を発症する方の特徴として、「身体に悪いのはわかってるけどやめられない」という考えの方が多く、そうした方はちょっと気になる症状があっても意識的に受診を避ける傾向にあります。
「糖尿病になったら痩せるって聞いたけど、全然痩せないから大丈夫」といった考え方は危険であり、定期的に検査を受けることが大切であることを覚えておきましょう。
「糖尿病の症状かも?」と感じたら、すぐに検査を

おおこうち内科クリニック院長
大河内 昌弘 先生
一つでも症状があれば要注意!
糖尿病は生活習慣病の代表格であり、糖尿病予備軍も含めれば今や日本で1000万人が該当する病気です。
糖尿病の多くは、乱れた食生活と肥満が続くことで発症しますが、中には妊娠に伴って発症するタイプや、子どもにも発症することがあります。
糖尿病にかかると目、腎臓、手足など体のさまざまな部位の機能が失われる可能性があり、その症状としては、口の渇き、やせ、多尿(頻尿)、倦怠感、しびれ、ED、視力の低下など、多種多様です。
また、2型糖尿病や妊娠糖尿病については、症状がほとんどなくても糖尿病を発症している場合があります。
糖尿病は早期に治療介入すれば、糖尿病性合併症を抑制することができる病気です。症状がひどくなってから、糖尿病治療を開始すればよいという考えは大間違いです。
遺産効果(レガシー効果)と言って、血糖コントロールが悪い時期が長いほどそのつけはずっと残り、後に、心筋梗塞や脳卒中などの命にかかわる重篤な合併症を発症する確率が高まります。
ですから、大したことがないからと放置せず、当てはまる症状がひとつでもある場合は、一度お近くの内科クリニックで採血検査を受けてみましょう。

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この記事の監修者プロフィール

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